研究概要 |
全身性強皮症(systemic sclerosis ; SSc)は皮膚硬化と内臓諸臓器の線維化を主徴とする自己免疫疾患で、患者のQOLおよび予後を著しく障害する重大な疾患であるが、未だ病因は解明されていない。線維化の形成には局所に浸潤する白血球によって産生されるサイトカインが重要な役割を果たしていることが知られているものの、白血球が線維化の生じる組織に浸潤する分子メカニズムについては明らかではない。そこで、白血球の血管外浸潤を担う主要な細胞接着分子であるL, E, P-selectin, intercellular adhesion molecule (ICAM)-1,およびP-selectin glycoprotein ligand (PSGL)-1のSScにおける役割について、各細胞接着分子欠損マウスを用いたブレオマイシン(bleomycin ; BLM)誘発SScモデルにおいて解析を行った。L-selectinとICAM-1それぞれのノックアウトマウスでは皮膚硬化と肺線維化の有意な抑制が認められ、これとは逆にE, P-selectinとPSGL-1それぞれのノックアウトマウスでは線維化の増悪が認められた。このことは、L, E, P-selectin, ICAM-1およびPSGL-1が、未だ有効な治療法が開発されていないSScに対する新たな治療ターゲットとなり得ることを示していると考えられる。今後更なる検討を経て、SScの新規治療法が開発されることが期待される。
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