研究概要 |
培養マウスケラチノサイト細胞株Pam212細胞はマウスに接種すると低分化型有棘細胞癌を形成するが殆ど転移しない低転移性株である。このPam212細胞を親株としてマウスに接種し、稀な転移巣から娘株を樹立するという方法で、高率に転移巣を形成する高転移性娘株であるLY細胞,LU細胞が樹立された。これらを同じgenetic backgroundを持ちながら転位性の異なる癌転移のモデルシステム細胞株として使用し、遺伝子mRNA発現および蛋白質レベルでの発現プロファイルの網羅的検索・比較をおこなった。mRNA発現の比較にはDNAマイクロアレイを、蛋白質発現の比較には2D-DIGEとMALDI-TOF/MS質量分析による同定の組み合わせを用いた。低転移性親株と高転移性娘株を網羅的に解析し、転移に関連する可能性のある候補mRNAおよび蛋白質を検索した結果、単層上皮型ケラチン(cytokeratin 8およびcytokeratin 18)を含む複数の候補が同定された。いずれも高転移性娘株で発現が増強しており、転移の促進に働いていると思われた。これらのうち、cytokeratin 8とcytokeratin 18はレトロウイルス発現系によりPam212細胞に発現誘導するとin vitroでの浸潤能が増強した。さらに、実際にヒト有棘細胞癌病理組織における免疫染色でも表皮内癌に比べて浸潤癌で有意に発現が増強していることを確認しており、他の分子についても同様に確認中である。
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