血管障害(vasculopathy)は、その血管が分布する組織の障害に直結することから臨床的に重要であるが、多彩な病態によって様々な程度の障害が引き起こされ、そのメカニズムが十分に解明されていないために疾患の分類や理解を困難なものにしている。一方、家族性地中海熱をはじめ、pyrin関連分子の遺伝子変異によって生じる自己炎症疾患において血管炎(vasculitis)を高頻度に併発することから、血管炎においてpyrin関連分子が役割を担うことが予想される。本研究においては、当科を受診した血管炎症候群患者の臨床、病理像、各種検査値を整理し分類する作業に加え、マウス皮膚血管肉腫由来血管内皮細胞株であるF-2を用いて、pyrin関連分子の血管内皮細胞における役割を明らかにすることを試みた。無刺激のF-2において、pyrinの他、inflammasomeの構成成分であるNLRP3、ASC、procaspase-1の発現をRT-PCRにて確認した。F-2にNLRP3のリガンドであるR837を添加した後の培養上清を用いたELISAにてIL-1bの産生を認めたことから、F-2には機能的なinflammasomeが存在することが示唆された。同時に細胞のFACS解析により、細胞死の誘導が確認された。さらに、この細胞死が単球で報告されているpyroptosisなのかどうか明らかにするために、mitotrackerとlysotrackerを使って膜電位の変化を検討中である。また自己炎症疾患に伴う血管炎症候群におけるpyrin関連分子の遺伝子解析研究について、当大学倫理委員会の承認を得た。
|