研究概要 |
今年度は1、フィラグリンの関与する皮膚バリア機能の詳細に関する検討と2、新規アトピー性皮膚炎マウスモデルの作製という二つの柱に基づき研究を進めた。 1、フィラグリンの関与するバリア機能の詳細の解明 従来皮膚バリア機能の指標として報告されているTEWL(trans epidermal water loss:経皮的水分蒸散量)を測定したところ、flaky tailマウスと野生型マウス間で有意差を認めなかった。一方、アトピー性皮膚炎の発症に最も影響する皮膚のバリア機能は、外界の物質の経皮的透過を防ぐ物質移動の障壁としての役割である。胎児マウスにトルイジンブルーを塗布し、その浸透性を評価したところ、flaky tailマウスでは野生型マウスに比べ明らかな色素透過性の亢進を認めた。 本研究より、フィラグリンは外から内への物質透過を防ぐ角層のバリア形成に重要であり、TEWLのみでは体外から表皮内への物質透過能を評価することはできないことが示唆された。来年度も引き続き、フィラグリンの関与する皮膚バリア機能の詳細を検討していく予定であり、本研究は今後の皮膚バリア機能に関する考え方・評価法を大きく変える可能性があるため、重要である。 2、新規アトピー性皮膚炎マウスモデルの作製 tape strippingや有機溶媒を使用するなどの人為的手段による皮膚バリア機能の破壊を用いずに、アトピー性皮膚炎様の病態を安定して誘導できるモデルを確立することを目指す。現在、各種抗原を反復塗布することでアトピー性皮膚炎様の病態を作製しうる最適条件を検討中である。 なお本研究の過程で筆者等は、flaky tailマウスがSPF下であっても長期間飼育すると、肉眼的・組織学的皮膚炎形成とtotal IgEの上昇を認めるという興味深い知見を報告する成果も挙げた(Moniaga CS,et al,Am J Pathol,in Press)。
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