研究概要 |
今年度はフィラグリンの発現が著しく低下しているflaky tailマウスを用い、1、フィラグリンの関与する皮膚バリア機能の詳細に関する検討と2、新規アトピー性皮膚炎マウスモデルの作製という二つの柱に基づき研究を進めた。 1、フィラグリンの関与するバリア機能の詳細の解明 flaky tailマウスはSPF下で長期間飼育すると肉眼的・組織学的皮膚炎を自然発症することを報告したが(Moniaga CS, et al. Am J Pathol, 2010)、皮疹部では皮膚バリア機能の指標として報告されているTEWL(trans epidermal water loss)が上昇しているのに対し、無疹部ではTEWLの上昇がみられないことがわかった。つまり、フィラグリン変異それ自体ではTEWLの上昇を起こさないことが示唆された。また、詳細なtape-strippingを用いた解析から、flaky tailマウスでは物理的刺激により角層が障害されやすい可能性が示唆された。 2、新規アトピー性皮膚炎マウスモデルの作製 刺激物質、ハプテン(DNFB)、蛋白抗原(OVA)の各物質を経皮的に塗布した後の経皮免疫応答を、flaky tailマウスと野生型マウス間で比較した。その結果、刺激性接触皮膚炎反応、ハプテン誘導性接触過敏反応、液性免疫応答のいずれにおいても、flaky tailマウスで有意に反応の亢進が観察された。本結果は、フィラグリン変異に伴う角層バリア機能異常に基づくものである可能性を示唆する。今後は抗原の種類、曝露方法を十分に検討することで、安定して皮膚炎を誘導できるアトピー性皮膚炎マウスモデルの作製を目指す。 本研究は、フィラグリンの機能を正しく評価すると共に、皮膚バリア機能異常を有する皮膚への経皮的抗原曝露から疾患が発症するまでのアトピー性皮膚炎発症機序の解明を可能とするマウスモデルの作製につながるものである。
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