研究概要 |
尋常性天疱瘡は、表皮細胞間接着分子であるデスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体により誘導され、全身の皮膚および粘膜にびらん、水疱形成をきたす重篤な自己免疫性疾患である。尋常性天疱瘡の現在の治療は、副腎皮質ホルモン剤など免疫を非特異的に抑制する治療が中心であり、副作用が多く,疾患特異的な治療の開発が望まれる。疾患特異的な治療法を開発するには、尋常性天疱瘡における水疱形成機序の解明が重要である。我々は、Dsg3をgreen fluorescent protein (GFP)を用いて可視化した遺伝子組み換えマウス(Dsg3-GFPマウス)を作成した。Dsg3-GFPマウスに抗Dsg3抗体を投与して、Dsg3および抗Dsg3抗体の動態をin vivoでライブ観察することで、尋常性天疱瘡における水疱形成機序の解明を目指している。In vivoでのライブ観察には成人マウスの耳が適しているため,Dsg3-GFP成人マウス耳に、過去に新生児マウス皮膚でDsg3に対する病原性の確認されている抗Dsg3抗体(AK23)を皮内注したが病理組織学的に水疱形成を確認できなかった.皮膚ではデスモグレイン1(Dsg 1)も細胞接着能があるため,Dsg1を阻害するためにexofoliative toxin A(ETA)をAK23に添加し,耳に皮内注したが、やはり水疱形成を確認できなかった。Dsg3-GFP新生児マウスの背部にAK23+ETAを投与した所水疱形成は確認されたが、心拍動のためin vivoでのライブ観察が困難であった.現在、適切な麻酔条件、抗体の濃縮による水疱形成の条件を再検討するとともに、皮膚組織培養での水疱形成過程のライブ観察などを検討中である.麻酔条件が整えば,細胞分裂期におけるDsg3およびデスモゾームをin vivoで可視化することで、その動態の解明を目指す予定である。
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