研究概要 |
本研究の目的は、マスト細胞が"かゆみ"惹起分子の1つであるIL-31を産生し、アトピー性皮膚炎の"かゆみ"症状の発現に直接的に関与するのか、について、インビトロ及びインビボの実験系、及び臨床検体を用いて検証することである。本年度は、この目的に照らし、マウス皮膚炎モデルでのマスト細胞によるIL-31産生の有無と"かゆみ"との関連性について検討した。 その結果、単回での受動型皮膚過敏反応(passive cutaneous anaphylaxis reaction)のマウス耳組織においてはIL-31 mRNA発現は弱かったが、ハプテン(DNCB)の反復塗布によって皮膚炎を誘発したマウス耳組織ではIL-31 mRNA発現が上昇することを見出した。またそれは機能的にT細胞が欠損しているヌードマウスにおいても上昇した。ヌードマウスでの皮膚炎発症部位ではマスト細胞がタンパク質レベルでIL-31を産生していること、正常部ではIL-31の発現が見られないことを免疫組織染色法にて確認した。 以上の結果は、マウス皮膚炎モデルにおいてマスト細胞が病変局所で、IL-31を産生していることを明らかにした。さらに、マウスマスト細胞に特異的なプロモーター領域が同定されていることから(J Immunol 170 : 334, 2004)、このプロモーター配列をIL-31遺伝子につないだトランスジーンを作成し、今後、このトランスジーンを用いてトランスジェニックマウスを作製し、その掻爬行動を観察することによってマスト細胞由来のIL-31の発現と"かゆみ"との関連について検討する。 また今後細胞特異的にIL-31を発現するトランスジェニックマウスを作成することによって、マスト細胞が発現するIL-31が新たなかゆみのメカニズムとして重要であるか否かについて今後検討可能となる。
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