研究概要 |
表皮は皮膚の最外層を覆う組織であり、常に機械的刺激を享受しているが、表皮細胞に対する機械的刺激の作用についてはあまり研究されていない.我々は、表皮細胞を伸展可能なシリコンウェルに播種し、1分間に1回20%進展収縮させることを繰り返し行うことによって、表皮細胞に繰り返し伸展刺激を加えた。この伸展刺激により、表皮細胞には伸展力、ずり力などが加わるものと考えられ、臨床的には掻破や、マッサージ刺激などを模倣しているものと考えられる。表皮細胞に繰り返し伸展刺激を加えることにより、IL-1β、IL-18,IL-8,プロスタグランディンE2などの産生が誘導された。これらの物質は炎症にかかわる分子であり、その発現充進は、皮膚の炎症を促進すると考えられた。また伸展刺激の作用は、野生型ケラチンK1遺伝子を導入した細胞ではコントロール細胞に比べ変化が弱い傾向があった。ケラチンブイラメントは塩基性ケラチンと酸性ケラチンのペアでヘテロポリマーを形成し、表皮細胞の細胞骨格として、表皮細胞の形態維持をはじめさまざまな機能を有している。未分化な基底細胞にはケラチンK5、K14が発現しているが、ケラチンK1は、基底層より上部の有棘層の分化した表皮細胞で発現が認められる。このことから、表皮の分化を促進してケラチンK1発現を誘導するような化学物質は、表皮細胞の外的刺激に対する安定性を増し、外的刺激による炎症惹起を抑制する可能性があると考えられた。
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