研究概要 |
表皮は皮膚の最外層を覆う組織であり、常に機械的刺激や紫外線などの物理的刺激にさらされているが、表皮細胞に対する直接的な機械的刺激の作用についてはあまり研究されていない。我々は、表皮細胞を伸展可能なシリコンウェルに播種し、1分間に1回20%進展収縮させることを繰り返し行うことによって、表皮細胞に繰り返し伸展刺激を加える実験モデルを独自に作成した。この伸展刺激により、表皮細胞には伸展力、ずり力などが加わるものと考えられ、臨床的には掻破や、マッサージ刺激などを模倣しているものと考えられる。表皮細胞に繰り返し伸展刺激を加えることにより、IL-1β,IL-18,IL-8,プロスタグランディンE2, IL-33などの産生が誘導された。これらの物質は炎症にかかわる分子であり、これらの発現亢進は、表皮だけでなく皮膚全体の炎症を促進するものと考えられた。特にIL-33については、培養表皮角化細胞での発現が今まで報告されておらず、今回私が始めてIL-33の伸展刺激による蛋白レベル・遺伝子(mRNA)レベルでの発現を証明できた。IL-33は最近発見されたIL-1ファミリーの1つであり、Th2サイトカインによる炎症反応に関与していると考えられている。IL-33はUVBやIFNγによっても表皮細胞での発現が亢進しており、伸展刺激によるIL-33の発現は細胞障害を受けたときの危険伝達シグナルとして作用するものと考えられた。
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