表皮細胞に機械的伸展収縮刺激を加えた際に変化する分子について検討を行った。表皮細胞に機械的伸展収縮刺激を加えることにより、IL-8、PGE2、IL-33などの分子が誘導された。以前の検討から、伸展刺激によって、ERKの活性化が認められることから、これらの阻害剤によって誘導が抑制されるか否かを検討したところ、機械的伸展収縮刺激によるこれらの分子の誘導は、ERK阻害剤によって阻害されることが分かった。このことから、IL-8、PGE2、IL-33の機械的伸展収縮刺激による誘導はERK(依存的であることが明らかとなった。分化型ケラチンであるケラチンK10遺伝子を強制発現させた表皮細胞およびコントロール表皮細胞に機械的伸展収縮刺激を加えてRNAを抽出し、DNAアレイによって発現が変動する分子について検討した。野生型ケラチンK10の発現が亢進した表皮細胞に機械的伸展収縮刺激を加えると、強制発現しない表皮細胞に比べて発現が変動する分子数が減少した。このことから、分化型ケラチンを発現誘導することで、機械的伸展収縮刺激に対する耐性が誘導できると考えた。すなわち、表皮細胞の分化を誘導するような薬剤を外用することによって、表皮細胞は機械的伸展収縮刺激に対して反応しにくくなると考えられた。このような外用剤は、機械的伸展収縮刺激による表皮細胞の炎症を抑制する可能性があると考えられ、これが皮膚老化などにどのように関与するのかを今後検討したい。また、伸展収縮の強度や頻度を変化させることによって、表皮細胞に与える影響がどのように変化するのかを、今後検討する予定である。
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