[内容] 我々が開発している、インターネット上の悪性黒色腫自動診断支援システムの実用化を具体的に推進するために、(1)臨床現場で用いられているダーモスコピー診断指標(ABCD rule、7-point checklist)のコンピュータによる自動定量化法の開発、(2)入力ダーモスコピー像に見られる明度や色異常の自動検知+補正機能の開発の2点の開発を重点的に行った。 [意義と重要性] 診断システムの利用者(=医師)に診断結果のみではなく、(1)診断指標の値を定量的に提示できるようにすることで、セカンドオピニオンとしてのシステムの信頼性、利便性を大幅に向上させる。また、我々のシステムはインターネット上のシステムであるため、様々な状態のダーモスコピー画像が送られてくる。悪条件の画像は予想外の診断結果を導く危険性がある。(2)自動画像補正法の開発により、熟練皮膚科医のように、悪条件画像に対しても安定的に診断が行える識別器が構築できれば、これらのリスクを低減できシステムの信頼性が向上すると考えられる。 [成果のまとめ] (1):皮膚科医が臨床現場で用いるABCD rule、7-point checklistの2指標、全15項目について、推定誤差が皮膚科医間の判断のばらつきよりも小さく、また皮膚科医の判断と統計的有意差が見られないモデルの構築に成功した。これにより、既存の成果と併せて良性、悪性の診断結果の提示だけではなく診断指標の定量化もできるようになった。(2):システムに送信された画像のみから、特殊なハードウェアなどを必要とせず、画像の明度、色彩を適切なダーモスコピー画像のものに調整する手法を確立した。交差検定法による評価では、色相、明度、彩度の誤差は、それぞれ1.2%、4.7%、6.9%であり、従来のハードウェアの補正誤差と同等の成果を実現した。
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