本研究の目的は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)でのFra-2の発現解析、Fra-2によるc-Myb発現誘導機構の解析、およびc-Mybの細胞増殖に関わる分子機構の解析を通じて、Fra-2とc-MybのCTCL発癌における役割を解明することにある。そのため先ず、ATL、CTCL細胞株及び患者由来検体におけるFra-2とc-Mybの発現を解析した。その結果、Fra-2と同様にc-Mybも普遍的に発現していた。次に、c-MybがFra-2の直接的な標的遺伝子であることを証明する為、c-Mybプロモーターの発現解析を行った。その結果、Fra-2/JunDヘテロ二量体によってc-Mybが発現誘導されることを見出した。また、c-Mybの発現抑制によってATL、CTCLともに細胞増殖が有意に低下した。このc-Mybによる細胞増殖促進の一部はc-Mycを介していることが推測されたが、ATL、CTCL細胞株の全てはそれを説明できなかった。そこでsiRNAによりc-Myb発現を抑制したATL細胞株のマイクロアレイ解析により、c-Mybの下流標的遺伝子の探索を行った。その結果、細胞増殖に関わる新規c-Myb標的遺伝子としてRasファミリー蛋白質の活性化因子であるRasGRP2を同定した。これらの結果から、CCR4陽性成熟型T細胞リンパ腫においてFra-2/c-Myb経路は発癌遺伝子カスケードとして機能し、特に細胞増殖に寄与することが示唆された。
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