研究概要 |
スフィンゴシン-1リン酸(以下S1P)は,生体内で多彩な機能を有する脂質メディエーターである。他方,好酸球はアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎,薬疹などアレルギー性皮膚疾患との関連が知られるが,好酸球関連皮膚疾患におけるS1Pの役割は未解明である。我々は,S1Pの好酸球循環動態および皮膚浸潤における役割について検討した。ハプテン反復塗布モデルを用いて、S1Pのレセプターである、S1P1に対するインヒビター(FTY720)投与後の皮膚における好酸球の局在や遅発型反応について検討した°次に、IL-5トランスジェニックマウスに、FTY720を投与し、末梢血好酸球数を測定した。さらに、二次リンパ組織における好酸球の局在も検討した。また、S1P1の発現についてreal-time PCRを用いて検討した。最後に、ケモタキシスアッセイにおいて、好酸球のS1Pに対する遊走能を調べた。IL-5トランスジェニックマウスにFTY720を投与すると,血中好酸球数が低下した。さらに,マウス好酸球にはS1P1が発現していることを確認した。また,ケモタキシスアッセイにおいて,S1Pによる好酸球のケモタキシスが亢進した。加えて,FTY720投与下では好酸球のマウス骨髄からの移出が抑制された。ハプテン反復塗布によるアトピー性皮膚炎モデルマウスにFTY720を投与すると,好酸球の皮膚浸潤が低下し,遅発型反応が抑制した。好酸球はS1P-S1P1シグナルに感受性を示し,S1Pが骨髄からの好酸球遊走制御に関与することが明らかになった。好酸球関連疾患における,好酸球の皮膚浸潤メカニズムとしてS1Pの関与が示唆された。
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