平成21年度から引き続き、北海道大学病院で治療中の統合失調症患者415例に対する調査を実施した。データベースを作成し、収集した情報を随時入力した。全例の解析が終了し、学会で発表した。主治医への調査による病名告知状況は、「統合失調症」と告知している症例が65.1%であり、「精神分裂病」2.2%、他の病名で告知8.0%、これまで病名に触れられていない症例9.9%、不明14.8%であった。統合失調症もしくは精神分裂病の病名が未告知の症例における理由としては、「長年告知されていなかったためあらためて告知する意義が乏しい」44.4%、「病状に悪影響を及ぼすおそれがある」37。5%、「病状が不安定であったため」23.6%、「家族の反対」15.3%、「患者の知的な問題」6.9%であった。患者への調査では、病名を知っていると答えた患者が87.7%に上り、「統合失調症」と認知している症例が70.9%、「精神分裂病」3.5%、他の病名で認識12.2%、病名を知らない症例13.4%であった。医師からの疾患教育を受けたと答えた患者は59.2%であった。病名について医師から聞いたと答えた患者が58.5%、診断書などの書類から知った患者が24.0%、家族から聞いた患者が12.4%であった。 病名告知と他因子との関連を検討した結果、病名告知群は治療開始からの期間が有意に短く、調査時年齢が有意に低く、統合失調症への呼称変更や時代背景の変化により、病名告知がより積極的に行われるようになってきたことを反映している可能性が示唆された。病名未告知群は就労率が有意に高く、抗精神病薬の用量が有意に少なく、軽症で社会適応が良好な外来症例には病名が告知されにくい可能性が考えられた。病名告知群では、抑うつ症状の自覚が有意に強く、希死念慮も有意に多く、病名告知の際には注意すべきと考えられた。 協力医療機関における調査として、市立稚内病院(約100例)、市立室蘭総合病院(約100例)、倶知安厚生病院(約100例)、石金病院(約160例)での調査を実施した。協力医療機関での調査票の回収を終了し、発表へ向けて解析中である。
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