不安障害の中でも、社交的な場面への恐怖感や回避を特徴とする社会不安障害は、疫学調査から生涯有病率が13.3%と高いにも関わらず、これまで認知度が低く、治療を含め十分な対応がされてきたとはいいがたい。一方で、家族研究や双子研究から遺伝性が指摘されてきている。不安に関連する候補遺伝子部位のひとつとして、Neuroticismに対応する動物モデルのEmotionalityの量的形質遺伝子座位(Quantitative Trait Loci : QTL)として、染色体1番長腕(1q)の連鎖が報告されている。同部位上に存在するRegulator of G-protein Signaling 2(RGS2)と社交不安障害の中間表現型と考えられる小児の行動抑制(Behavioral inhibition)や成人のintroversion(内向性)に関連が認められることが報告されている。本研究では、社会不安障害やパニック障害患者を含めた不安障害患者または健常者のDNAサンプルを収集し、同時にNEO-PIRやLiebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)などの心理データや生活習慣データも併せて収集した。パニック障害群686例、健常対照群556例を用いてRGS2遺伝子上の4つの一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism : SNP)について解析を行ったところ、rs10801152でアリルP値=0.03と有意な関連が認められた。またハプロタイプ解析ではTGGCの組み合わせで有意差(P=0.002)が認められた。この結果から不安障害の発症にRGS2遺伝子の関連が示唆されることを明らかにした。今後は、Neuroticism、Introversionを含めた量的形質との関連を調べ、発症の基盤に関わる性格傾向との関連についても解析を行っていく。
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