統合失調症は生涯有病危険率が約1%と高、思春期に発症し社会機能の低下を伴い慢性に経過する精神疾患であるが、いまだその病態は明らかでない。統合失調症は複数の遺伝的要因と環境的要因が相互に影響して発症する複雑疾患と考えられているが、遺伝的要因の関与が大きく、分子遺伝研究は統合失調症の病態解明における最も有力なアプローチとして期待されている。 連鎖解析などから染色体22番長腕は統合失調症の候補領坂として注目されている。また、カルシニューリン関連遺伝子と統合失調症との関連が複数報告されている。これらのことから、カルシニューリン結合タンパク質1(CABIN1)遺伝子は統合失調症の有力な候補遺伝子である。そこで日本人の症例・対照サンプルを用いてCABIN1遺伝子と統合失調症との関連解析を行った。 対象者は、DSM-IV基備により統合失調症と診断された患者595人と精神疾患の既往のない対照者598人である。HapMap日本人データを用いてCABIN1遺伝子のタグ一塩基多型(SNP)を選択した。SNPの遺伝子型はTaqMan法により判定した。なお、本研究計画は新潟大学医学部遺伝子倫理審査委員会の承認を得ている。 11タグSNPのいずれも統合失調症との有意な関連は認められなかった。また、ハプロタイプ解析でも有意な関連はみられなかった。 登端者・両親トリオサンプルを用いた先行研究と同じく、本研究でもCABIN1遺伝子と統合失調症との間に有意な関連は認められなかった。これらの結果は、CABIN1遺伝子が統合失調症の発症脆弱性に関与していないであろうことを示唆している。ただし、効果量の小さなSNPと統合失調症との関連を同定するためには、両研究のサンプル数は十分でない。CABIN1遺伝子と統合失調症との関連について明確な結論を得るためには、より大きなサンプル数と十分な数のマーカーを用いたさらなる研究が実施される必要がある。
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