研究概要 |
統合失調症の発症におけるCNVの役割を明らかにするため,日本人の統合失調症多発罹患家系(DNAサンプルあり15名,内罹患者6名)を解析した。さらに本家系において見出されたCNVについて,統合失調症罹患者と健常対照者の間で関連解析を行った。 前年度,Illumina社のHuman Omnil-Quadチップを用いて1,140,419個のSNPを解析し,家系内で見られた4164のコピー数多型(CNV)領域の内,罹患者においてコピー数に偏りのあるCNV (CNVR7606_full;Conrad et al.,2010)を見出した。 当該年度において,Applied Biosystems社のABI PRISM 7900HTを用いて定量的リアルタイムPCRを行い,家系内のCNVR7606_fullのコピー数を確認した。罹患者5名,罹患状態不明1名において完全欠失しており,1名の罹患者では1コピーであった。非罹患者では完全欠失が見られず,2コピー2名,1コピー6名だった。さらに同法を用いて統合失調症症例627名および健常対照620名のサンプルでコピー数を確認し,完全欠失(コピー数=0)とそれ以外(コピー数=1&2)との間でχ2検定を行ったが,有意差は見られなかった(χ2=0.098,P=0.706)。また,各コピー数間での有意差も見られなかった。 以上の結果から,本家系においてはCNVが統合失調症の発症に寄与している可能性が低いことが示された。
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