研究課題/領域番号 |
21791120
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小坂 浩隆 福井大学, 医学系研究科, 特命准教授 (70401966)
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キーワード | 児童思春期精神医学 / 広汎性発達障害(PDD) / 自閉症スペクトラム障害 / functional MRI (fMRI) / 自己顔認知 / オキシトシン / 右下前頭葉 / 右側島 |
研究概要 |
昨年度までの広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)者の脳構造(VBM)、脳機能画像(fMRI)研究にひきつづき、自己顔評価課題(fMRI)の脳機能研究に国際学術論文に投稿し、受理された。以下、その詳細である。 自閉症スペクトラム障害者は、幼少時から自己認知の発達の遅れがあり、自己と他者の区別があいまいであると言われる。fMRIを用いて、自己顔提示時に起こる自己意識情動の反応と脳賦活を、他者顔提示時と比較検討する。【対象と方法】男女自閉症スペクトラム障害者15名(23.7+/-4.3歳、full IQ 105.4+/-11.7)と男女定型発達者15名(23.3+/-3.6歳、full IQ 110.1+/-4.3)に、3T-MR装置にて、提示される自己顔と未知人物顔の写真写り評価(顔評価)を行った。【結果】定型発達者群では、他者顔課題と比較して自己顔認知の際に、右側島、両側前部/後部帯状回などで広範囲に賦活を認めた(corrected P<0.05)が、自閉症スペクトラム障害群では賦活が全体的に小さかった。また、それらの領域の脳賦活は、AQ(自閉症尺度)下位項目と逆相関をしている(P<0.001)ほか、認知的評価と情動的評価に解離があることも認めた。【考察】これらの結果は、自閉症スペクトラム障害者は自己評価の認知プロセスは定型発達者群と変わらない一方で、自己顔評価に伴う感情反応が異なること、またそれらの感情状態への注意が向きにくいことなどが推測された。また、右側島の領域は、平成22年度に報告したわれわれの脳構造(VBM)研究で、自閉症スペクトラム障害者群で体積が有意に小さい領域である。よって、この右側島が構造でも機能でも障害されて、重症度逆相関しており、自閉症スペクトラム障害の病因である可能性が高いと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究報告として、脳構造、脳機能研究で、当初の予定通り報告できている。 そのほかの脳機能研究で進行中のものがあるほか、オキシトシンの血液検査なども現在進行中である。 順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
広汎性発達障害の脳構造、脳機能研究の他、生物学的検査として、各被験者のオキシトシン血中濃度、唾液濃度の測定にも向けて行く。また、オキシトシン経鼻投与することが可能であり、血中濃度が低く、社会性の障害がある広汎性発達障害群に、オキシトシン経鼻投与により社会性が高まるかも確認していきたい。遺伝子検査も同時に進めていく計画である。
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