本研究では、自閉症者を対象に臨床評価と認知機能評価を行い、同一対象者においてDTI研究とPET研究を進める。これらの多面的検討により、「脳内炎症免疫反応過程⇒軸索走行異常⇒症状形成」という病態発生のカスケードを描き出すことを目的とする。平成21年度は、ADI-Rを用いて診断された自閉症者20例、健常者19例(年齢18~25歳、IQ85以上)に対し、[11C]PKI11195(活性型ミクログリアを標識)を用いて、PET検査を実施した。この結果、自閉症者では、脳幹、小脳、視床、前頭葉、側頭葉、頭頂葉において、健常者に比べ、有意に高い[11C]PK11195の結合能(BP)が見られた。このことは、自閉症者において、脳内の複数の部位でミクログリアの活性化が起こっており、どう部位の炎症免疫反応の存在が示唆された。既に同じ対象者に対して、症状評価と認知機能検査を終了しており、平成22年度は[11C]PK11195のBPとの関連を解析する。このことで、脳内の炎症免疫反応が臨床症状や認知機能にどのような影響があるかを検討する。また、DTIの撮像にも着手しており、DTIにおけるFA値を算出することで、自閉症者における脳内の軸索走行異常を明らかにする。さらに、PETのBPとDTIのFA値を脳内の部位別に比較検討し、冒頭で述べた「脳内炎症免疫反応過程⇒軸索走行異常⇒症状形成」という病態発生のカスケードのカスケードを明らかにする。
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