研究課題
自閉症は、対人的相互作用やコミュニケーションの障害、興味・活動の限定された反復的常動的な行動様式などによって特徴付けられる広範性発達障害である。自閉症の病態メカニズムはいまだ不明であり、根本的な治療法は確立されていない。その要因の一つに適当なモデル動物が存在しないことが挙げられる。そこで本研究課題では、遺伝子改変技術によって作製したVLDLR過剰発現ラットが、自閉症者に類似の行動学的変化(社会性の障害、コミュニケーションの障害、認知機能の障害など)や、病理学的変化(小脳プルキンエ細胞の減少、両側扁桃体の容量増大など)を呈するかどうかを解析し、本ラットが自閉症の病態モデルと成り得るかを検討することを目的とする。21年度は行動実験を中心に解析した。まず基本的な行動を評価するために自発運動量を測定した。その結果、Tgラットにおいて自発運動量が有意に増加していた。一方、放射状8方向迷路課題によって空間認知における作業記憶を評価したところ、習得に有した時間および習得するスピードにおいて、それぞれコントロールと比べ有意な差は認められなかった。これらの結果から、本ラットは多動であり認知記憶機能は正常であることが明らかとなった。多動は自閉症を含め広範性発達障害に広く認められる症状であり、VLDLRを過剰発現することで多動という行動異常が現れることは非常に興味深い。22年度にコミュニケーションの障害、反復性の評価、および組織学的評価などを行った上で最終的な評価をする予定である。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)
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