本研究は、注意欠陥多動性障害患児において薬物が脳機能に与える影響を侵襲性の低い近赤外線酸系モニター(NIRS)による生理学的指標を用いて評価することにより、病態を反映した客観的の高い薬物療法の効果判定方法を開発することを目指している。 注意欠陥多動性障害を持つ児童は、学校での授業中、途中で気が散ってしまう、他ごとを始めてしまうなど、臨床的に長時間の集中の維持が困難であることが知られている。またNIRSの利点として他のモダリティに対し、比較的長時間の計測が可能であることが挙げられる。これらから本年度はContinuous Performance Test (CPT)を課題として用いた場合の、NIRSによる10分間を越える長時間連続測定実施の可能性にっき、検討を行った。すでに注意欠陥多動性障害と診断されメチルフェニデートによる薬物療法が開始されている児童10名に対する長時間CPTの予備的実験の解析から、メチルフェニデートの投与時には非投与時と比較して、測定の開始直後、及び終了前に両側前頭葉における酸素化ヘモグロビン濃度がより高くなっている可能性が示唆された。 また長時間測定においては、体動によるアーティファクトが大きな問題となる。これに対応するため、体幹や下顎の装具による固定を行うなど、安定して長時間測定が可能となる手法の検討を行った。これらの知見に基づき、プロトコルを決定し、被験者のリクルートとサンプリングを開始している。今後症例数を増やし、更に詳細な検討を行うことを予定している。
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