研究概要 |
本研究では気分障害の病態解明を第一の目標とし、うつ病モデルマウスにおけるGDNF発現量低下と抗うつ薬投与によるGDNF発現量亢進に着目し、抗うつ薬のGDNF発現亢進に対する選択性とその分子メカニズムをエピジェネティクスの側面から深く探求することを目的としている。 平成22年度は(1)抗うつ薬添加時のピストンH3,H4のアセチル化レベルの増加にどのヒストン脱アセチル化酵素HDACs (HDAC1-11)が関与するのかを培養細胞を用いて検討した。その結果、HDAC4が関与していることを見出し、培養細胞にHDAC4を過剰発現させると抗うつ薬によるGDNF産生が有意に抑制されることを発見した。次に、(2)-(1)うつ病モデルマウスを用いて、慢性ストレス負荷後のGDNF遺伝子プロモーター上のヒストンアセチル化レベル、および抗うつ薬投与後のストレス負荷マウスを用いて同様の検討を行った。その結果、ストレス負荷群ではH3のアセチル化レベルが減少し、抗うつ薬投与にて回復していた。さらに、(2)-(2)ストレス負荷および抗うつ薬によりHDACsの発現が変化しているかをリアルタイムPCR法にて検討した。その結果、線条体において、ストレス負荷によりHDAC2が有意に増加し、抗うつ薬により回復していた。また、HDAC4は抗うつ薬投与により増加していた。 今後は(1)培養細胞を用いた実験系での抗うつ薬によるHDAC4を介したGDNF発現調節の詳細なメカニズムの解明、(2)うつ病モデルマウスを用いて脳内側坐核におけるHDAC4を阻害することでの、慢性ストレス負荷によって誘発されるうつ様行動に対する抗うつ薬の抑制効果への影響を検討したいと考えている。
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