研究概要 |
発達障害児は睡眠の問題を併存することが多いが,その実態を明らかにした報告は少ない.発達障害児の「睡眠の問題」と「行動の問題」との関連を明らかにすることを目的として,精神科児童青年期外来を受診した115例の発達障害児を対象に,睡眠評価指標(Children's Sleep Habits Questionnaire : CSHQ)と行動評価指標との関連を検討した.行動評価指標として,子どもの行動チェックリス(Child Behavior Check List : CBCL)・子どもの強さと困難さ質問票(Strengths and Difficulties : SDQ)・自閉症スクリーニング質問紙(Autism Screening Questionnaire : ASQ)・ADHD評価スケール(ADHD-Rating Scale : ADHD-RS)を主に用いた. CSHQのカットオフ値を50点とし,睡眠の問題が多い群(CSHQ50点以上群)と少ない群(CSHQ50点未満群)に分類し比較したところ,ASQで評価した自閉症症状は睡眠の問題の程度に大きな差異をもたらさなかったが,睡眠の問題が多い群では,CBCL, SDQ, ADHD-RSの多動・不注意のサブスケールが有意に高値であり,睡眠の問題が行動上の問題,特に多動・不注意症状と関連することが明らかとなった. 発達障害児における睡眠の問題が,行動上の問題と関連している可能性があることから,発達障害の中核症状だけでなく睡眠の問題にも注目することが重要であり,睡眠習慣・睡眠障害の介入により,発達障害の症状を軽減し,児の発達・成長を促すことができる可能性があることが示唆された.
|