米国でエビデンスに基づくプログラムとされるIllness Management and Recovery(IMR:疾病管理とリカバリー)の日本における効果研究を目的に、前年度に引き続き、横浜市立大学附属病院など6施設においてIMRを実践し、対象者をさらに蓄積した。プログラムのフィデリティを維持するため多施設研究会議を毎月1回以上開催した。今年度までにIMRを施行された患者は87名(男性37名、女性50名、平均年齢35.2歳、統合失調症83名、その他4名)となった。IMR施行前後に、機能の全体的評価(GAF)、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、精神の健康管理の積極性評価尺度(PAM13-MH)、SF-36健康調査票(SF-36)、生活満足度スケール(LSS)、地域生活における自己効力感尺度(SECL)、利用者満足度調査票(CSQ-8)を用いて評価した。IMRの実施期間は平均9.78ヶ月、実施回数は平均32.6回であった。途中で16名(18%)が参加を中断した。統計学的解析の結果、GAF、BPRS、PAM13-MH、SF-36「社会生活機能」、LSSの全ての因子、SECL「対人関係」「合計得点」で、有意な改善を認め、CSQ-8の終了時の平均点は25.3点であった。 今年度は研究開始よりIMR終了後2年を経過した対象者も蓄積されたため、効果の持続性を検討する目的で実施後2年後の調査も行った。対象は、2009年4月までにIMRをすべて終了し、IMR終了後2年後における評価が可能だった15名(男性6名・女性9名、全例統合失調症、平均年齢30.5歳)である。実施前後と同様の指標を用いて評価した結果、GAF、PAM13-MH、LSSにおいて、2年後も効果が持続していた。これらの結果は日本精神障害者リハビリテーション学会などで報告し、これまでの研究成果は、同学会開催の研修会や全国規模のフォーラムで発表した。家族心理教育については4施設にて実践・研究を継続しているが、同時に患者がIMRを受けている事例は少なく解析症例数に達していない。IMRに関しては、わが国で実践している施設はまだ少なく、日本におけるエビデンスの蓄積が必要であり、本研究は重要である。
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