研究概要 |
パニック障害はストレス関連疾患の一つであり、近年有病率が増加している。日常生活や社会生活に与える影響が大きく、そのQuality of Life(QOL)はうつ病よりも低いとする報告もある。慢性化しやすいため、生産性に対する影響・医療費に与える影響は大きい。そのため、効果的で効率的な治療法を確立し、普及させることが求められている。そのためには予後予測因子が同定されれば、より効率的な治療が可能になると考えられる。そこで、平成21年度は、1)パニック障害の短期的予後と予後予測因子の検索、2)認知行動療法の効果と転帰予測因子の検討を行った。 大阪市立大学医学部附属病院神経精神科に通院中の、主診断がパニック障害である年齢が16歳以上、65歳未満の患者50例を対象とした。本研究の目的、方法、意義、および対象者への人権保護の配慮(守秘義務など)、を十分に説明し書面による同意が得られた者を対象とし、患者が未成年の場合は両親の同意も得られた者のみを対象とした。基本情報として、年齢、性別、教育歴、婚姻歴について収集した。診断のためにStructured Clinical Interview for DSM-IV Axis I/II disorders (SCID-I,II)を行い、パーソナリティの評価にはRevised Neuroticism-Extraversion-Openness Personality Inventory (NEO-PI-R)も用いた。不安症状を評価するためにHamilton Anxiety Scale (HAM-A)、State-Trait Anxiety Inventory(STAI)およびAnxiety Sensitivity Index (ASI)、抑うつ症状を評価するBeck Depression Inventory (BDI)、パニック障害発症前のライフイベントを評価するSocial Readjustment Rating Scale (SRRS)にて臨床症状を多角的に評価した。パニック障害の重症度はPanic Disorder Severity Scale (PDSS)、Clinical Global Impression Scale (CGI)にて評価した。50例のほぼ全例が広場恐怖を伴っており、罹病期間、当院受診までの治療歴も長期である、いわゆる難治例が大半だったために短期治療での改善度が低かった。現在までの解析の結果では、回避性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害の併存が予後因子となる傾向があるが有意な差は見出されていない。今後も継続的に調査を行っていく必要性がある。
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