一般就労者の精神健康度の調査として、うつ傾向に与える背景因子について調査・解析を行った。業務量(就業時間、残業時間)の多い20代、30代の男性は業務内外の心理的負荷が高く、特に配偶者のいない独身男性ではサポートがなく、孤立しやすくリスクが高いことを理解する必要がある。また女性では、結婚して就労を続けることが難しく、就労を続けている女性では、業務外での心理的負荷が高く、30代40代の女性のうつ傾向には注意が必要であることが結論付けられた。 またIT技術者について調査したところ、IT技術者の抑うつの背景には、家族との心理的距離があること、家族とのコミュニケーションの不足があることが推測された。またIT技術者と他職種の就労者の間に人格傾向での偏りはみられず、これはコンピューター自体が社会全体に広く浸透したためと考えられた。 近年のうつ病の増加、若年層の精神構造の弱体化が言われる中、平成19年-20年度の研究では、データ集積のフイールドが大学病院であったためか、古典的なうつ病や適応障害とは言っても重度の患者群が多く、いわゆる現代型うつ病といわれる集団を抽出し描き出すことが出来なかった。そのため今年度はフイールドを街中の精神科クリニックに移し、最近のうつ病患者を集積することとした。現在までのところ、4つのクリニックでアンケートによる患者調査を行っているが、配布数の合計は25例、回収数20例(回収率80%)である。これらの患者群を解析することにより、現代型のうつ病の休職、復職に関する背景因子を明らかにすることが出来ると思われる。また以前の大学病院での患者群と比較することにより、施設による患者群の違いも描けるのではないかと考えている。
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