性同一性障害者(Female to male)のホルモン療法前後における心理・認知機能の変化について調査した。福岡大学病院精神神経科外来に通院する患者のうちICD-10、およびDSM-IVで性同一性障害の診断を満たし、これまでにホルモン投与の既往がなく、精神科的な併存疾患が存在しない(Femaleo to male)症例(19例)に文書及び口頭にて研究への十分な説明行い、参加の同意が得られた者を対象とした。このうち治療群14例、対照群5例とした。治療群のホルモン療法はテストステロンエナント酸エステル125㎎を2週間に1回筋肉内注射した。認知機能検査、心理学的検査の各項目については、ホルモン療法前とホルモン療法開始3カ月後に施行し、その結果について統計的解析を行った。認知機能は男性優位課題の1つである3次元心的回転課題ホルモン療法後に有意に成績が向上した。男性ホルモンが女性の認知機能を完全に男性型に変化させるとは言えないが、女性の空間認知能力に対して影響を与えやすい可能性があることが考えられた。心理学的特性においては、不安や抑うつの軽減と男性性尺度の低下がみられた。テストステロンによる抑うつ改善効果と身体的性別違和の軽減が影響したと考えられた
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