双極性障害モデルマウスを用いて、欠失ミトコンドリアDNA(△mtDNA)とミトコンドリア呼吸鎖障害を指標に双極性障害における脳内責任部位、細胞種を探索するため、本年度はミトコンドリア構成タンパク質に対する抗体染色、および双極性障害モデルマウスとGFP遺伝子導入マウスを掛け合わせた。 △mtDNAを含有するミトコンドリアを障害部位として同定するため、核DNAにコードされたミトコンドリアタンパク質(Complex II subunit 70 kDa : COXII)に対する抗体とmtDNAにコードされたミトコンドリアタンパク質(Complex IV subunit I : COXIV)に対する抗体を用いた。異なる波長域を持つ蛍光二次抗体を用いてCOXIIとCOXIVを検出し、二重染色像を解析した。抗体の有効性を確認するため、mtDNAを欠乏した培養細胞株(ρ^0細胞)ではCOXIIシグナルのみを観察した。この結果により、mtDNAにコードされたタンパク質を有さないミトコンドリアを免疫組織化学的に確認できることを検証した。双極性障害モデルマウス脳組織においては、パラフィン包埋による薄切切片を用いて、COXIIシグナルのみが観察される細胞が検出できるかどうかを探索し、△mtDNAによってミトコンドリア呼吸鎖障害を持つ細胞の同定を試みた。 また、脳内に△mtDNAを持つマウスのある特異的な細胞腫を選択的に採取することを目的として、GFP発現細胞を有するマウスと双極性モデルマウスを交配した。GABA合成酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD67)、あるいはドーパミン合成に必須であるチロシン水酸化酵素をコードする遺伝子をプロモーターとして蛍光タンパク質(GFP)を導入した遺伝子変異マウスを利用し、系統樹立を試みた。
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