1. タウオパチーモデル動物のベータシート化タウ封入体結合プローブの探索 アルツハイマー病をはじめとするタウオパチーの特徴的病変はタウタンパクの異常な蓄積凝集の結果形成されるベータシート化したタウ封入体であることが知られている。しかし、当該病変が形成される機序および意義については充分に解明されていない。そこでまずはベータシート化したタウ病変を描出するイメージングプローブを創出して、その病変が形成される機序を把握することによりベータシート化する前段階である未線維体を標的としたイメージングプローブ開発を目指す。研究者はベータシート化したタウ病変に結合する基本骨格を同定した。そこから更に標的への結合選択性やポジトロン断層撮影(PET)用プローブとして優れた動態特性をもっ構造修飾を試みた結果、幾っかの候補化合物を創出した。 2. モデル動物に形成されたベータシート化タウ封入体を標的としたin vivo PET imaging 研究者はタウ病変に結合する基本骨格を修飾した候補化合物のうちの一種をRI標識してモデルマウスに投与し90分間PETスキャンを行った。トレーサーの病変への結合は、病変好発部位である脳幹と病変を欠く部位(小脳や線条体、前頭葉)との放射能比として算出した。観察終了後マウスは解剖脳摘出し病理標本を作製した。まずモデルとなるタウトランスジェニック(Tg)マウス群と野生型(Wt)マウス群の比較(各群n=6)を行ったところ、投与40~60分後にTg群の病変好発領域に有意なトレーサー結合の増加を認めた(p<0.005)るまたTg群においてタウ病変数とトレーサー結合の間に有意な正の相関を得た。これらの結果は同トレーサーがモデルマウスにおけるタウ病変に生体レベルで特異的に結合することを意味し、PETを利用して定量的に観察が可能であることを示すものである。
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