平成22年度は、まず初頭にデータ収録環境の見直しが行われた。その結果、従来どうしても解決できなかったアーティファクトの混入が、実はデータ収録用のハードウェアの不具合に起因する可能性を明らかにした。この問題を解決したうえで予備的な収録を行った結果、従来57%に過ぎなかった収録成功率が一気に90%を超えるようになった。この結果を受けて、平成22年の夏には健常若年群を対象とした収録を開始した。まずは男性群を対象として収録を行い、次に健常高齢群の男性を対象とした収録を行った。両群とも10名程度のデータが得られた。男性のみの被験者であるが、両群を比較した結果、正常加齢に伴う自律的脳活動の変性の兆候を認めることができた。これを受けて、平成22年の冬いっぱいをかけて健常若年女性、および健常高齢女性のデータを収録した。最終的に若年群、高齢群ともに男女合わせて20名前後のデータが収録された。このデータは安静閉眼時の自律的脳活動を脳波およびBlood-oxgen-level-dependent(BOLD)信号の推移で表したものである。これを平成21年度の本研究計画において確立した信号処理方法を用いて解析した結果、自律的脳活動の関連領域の拡大もしくは縮小が正常加齢の過程を反映する可能性が示唆された。この結果は第38回日本磁気共鳴医学会大会において発表され、また2011年度の国際磁気共鳴医学会、およびヒト脳マッピング大会で既に発表が受理された。平成23年度はこれらのデータの最終的な解析結果を確定させ、国際論文への投稿を行い、発表を目指す。
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