研究課題
EEG-fMRIのデータ解析において特に問題となるのは、EEGに重畳するMRIの傾斜磁場のスイッチングの際のアーティファクトと、MRIの静磁場中で生じる心弾動性アーティファクトの二種類である。特に前者については、2000年に提唱されて以来広く使われてきた平均アーティファクトテンプレート差分法がほぼ確立された手法とみなされてきた。本研究者はこの平均アーティファクトテンプレート差分法に基づいたいくつかのアプローチを評価したが、外れ値にたいして極めて脆弱であると結論した。また、その際の残差に対して、いかなる後処理を行っても有効な結果は得られないという結論に達した。しかし、2011年の終わりに特異値分解法をもちいる手法が提唱された。本研究者がこの手法に基づいた行列計算用のプログラムを作成し、40名分のデータに対して評価試験を行ったところ、既存のどの手法よりも優れたパフォーマンスを持つことを確認した。この理由を考察した結果、既存の平均アーティファクトテンプレート差分法がfMRIの複数のボリュームスキャンから移動平均法によって差分用のテンプレートを作成するのに対し(このために外れ値の影響が前後のボリュームスキャンに拡大する)、特異値分解法ではテンプレートは単純な時間軸上の部分平均ではなく、全時間データを分解して得られた複数の特異値を各ボリュームスキャンに対して残差が最小になるように当てはめるため、外れ値の影響を最小化できるためであると結論した。また、この手法が有利に働くということから、fMRI-EEG同時計測のEEGデータにおいては定常性の仮定(データの各部分の統計的性質は同じであるという仮定)。このアプローチは同時に心弾動性アーティファクトについても有効で、2009年に発表された制約附き独立成分分析と同等の性能を有することを比較によって確認した。このことは、EEG-fMRI同時計測データの基礎研究として非常に有意義であり、スタンダードな解析手法の転換点になりうることをいち早く確認した。
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Brain Imaging and Behavior
巻: (accepted)
10.1007/s11682-012-9148-5(E-pub ahead)
Neuroscience Letters
巻: 510 ページ: 154-158
doi:10.1016/j.neulet.2012.01.029
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