本研究の目的は、腫瘍の悪性度に深いかかわりがあるチミジンホスホリラーゼ(TP)に対して、高い親和性を持つウラシル誘導体を放射性フッ素標識することで、定量性に優れたPositron Emission Tomgraphy(PET)装置により可視化し、癌の検出、悪性度診断、治療方針の決定に対し重要な知見を得ることである。 以上の目的を達成するために、平成21年度は、TPに対して高い親和性を有する6-(2-Iminoimidazoyl)urasilを母体化合物とするTP阻害化合物(FMIMU)の合成を目的として研究を進めた。特にFMIMUを合成するにあたって重要な、フッ素標識するための標識前駆体(SnIMU)の合成を行った。SnIMUは、市販品であり、容易に入手可能な6-chloromethylurasilから5段階の反応を経て、総収率7%で得ることができた。この前駆体を放射性フッ素で標識することによって、目的化合物の合成が完了する。 また同時に、目的化合物のTP阻害活性を確認するため、非放射性フッ素を用いて合成したFMIMUの合成も視野にいれ研究を進めた。具体的には、SnIMUから非標識FMIMUを合成する手法と平行して、より効率的な合成経路を用いて非標識FMIMUを合成する経路を検討している。 これらの成果によりて得られるFMIMUを用いてTP阻害活性、TP発現細胞へのFMIMUの取込実験を行うことで、PETを用いたTP活性イメージングの可能性が大きく広がると考えている。
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