本研究の目的は、腫瘍の悪性度に深いかかわりがあるチミジンボスホリラーゼ(TP)に対して、高い親和性を持つウラシル誘導体を放射性フッ素標識することで、定量性に優れたPositron Emission Tomography(PET)装置により可視化し、癌の検出、悪性度診断、治療方針の決定に対し重要な知見を得ることである。 以上の目的を達成するために、本研究では、TPに対して高い親和性を有する6-(2-Iminoimidazoyl)urasilを母体化合物とするTP阻害化合物(FMIMU)の合成を目的として研究を進めた。特にFMIMUを合成するにあたって重要な、フッ素標識するための標識前駆体(SnIMU)の合成を行った。SnIMUは、市販品であり、容易に入手可能な6-chloromethylurasilから5段階の反応を経て、総収率7%で得ることができた。この前駆体を放射性フッ素で標識することによって、目的化合物の合成が完了する。 また同時に、SnIMUを経由しない、直接フッ素化法によるFMIMUの合成経路の模索も行い、5-Methyluracilを用いたモデル実験で、良好な結果が得られている。この合成経路には、新規化合物を含む興味深い知見が含まれており、今後の検討により新たな反応や、新規化合物合成法を確立したい。 これらの成果によって得られるFMIMUを用いてTP阻害活性、TP発現細胞へのFMIMUの取込実験を行うことで、PETを用いたTP活性イメージングの可能性が大きく広がると考えている。
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