研究概要 |
癌組織中のリンパ管新生は、癌の重要な予後不良因子であるリンパ節転移の促進に大きく寄与している。本研究では、腫瘍リンパ管新生に関与するVEGFR-3の生体画像化を目指して、その放射性リガンドの開発を目的とした。開発戦略としては、VEGFR-3に結合性を示すキナーゼ阻害剤3-(1H-indol-3-yl)-4-(3,4,5-trimethoxyphenyl)-1H-pyrrole-2,5-dione(ITPD)と内因性因子VEGF-Cの標識化を考えた。ITPDについては、そのメトキシ基を[11C]メチル基で標識することを念頭に、その脱メチル体の合成を試みた。まず、[11C]メチル基導入予定の水酸基を保護した部分構造を合成し、ITPD誘導体の合成を試みたが、中間体の合成、精製が非常に困難であることが判明した。そこで別の方法としてITPDそのものの合成を行い、ルイス酸条件下による脱メチル化反応を行った。すると、ルイス酸として三フッ化棚素を用いた場合、想定した脱メチル化反応は進行しなかったが、三臭化棚素を用いた場合、脱メチル化反応が進行し、低収量ではあるが目的化合物を得ることに成功した。また、VEGF-Cの標識については、新規標識法として、[11C]メチオニンとin vitroにおける無細胞蛋白質合成系を利用した[11C]VEGF-Cの合成を考えた。この新規合成法コンセプトの妥当性を検証するために、まずGFPをモデル蛋白質として、大腸菌抽出系を使用し、その炭素11標識体の合成を試みた。すると、非常に短時間で目的とする[11C]GFPを合成できることを見出した。この標識合成効率は非常に優れていることから、一般的に[11C]蛋白質の標識合成に利用できる可能性が非常に高いと考えられ、[11C]VEGF-Cの合成を実現できる有望な見込みが得られた。
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