研究概要 |
がんにおけるリンパ節転移は、その予後を予測する上で重要なファクターとなっている。血管内皮増殖因子受容体3(VEGFR3)は、がんのリンパ管新生で中心的な役割を担っていることから、その発現状態を非侵襲的に画像評価できれば、がんの予後不良を予測的に評価できる可能性がある。このような観点から、本研究では、陽電子画像診断法(PET)によるVEGFR3の生体可視化を目的とするPET画像化プローブの開発を行った。平成22年度は、前年度標識合成に成功したVEGFR-3に結合性を示すキナーゼ阻害剤3-(1H-indol-3-yl)-4-(3,4,5-trimethoxyphenyl)-1H-pyrrole-2,5-dione(ITPD)の炭素11標識体([^<11>C]ITPD)を用いて、小動物PETにより腫瘍イメージングの検討を行った。[^<11>C]ITPDは、対応する標識前駆体に、アルカリ条件下で[^<11>C]MeOTfを反応させることによりメチル化を行い合成した。その放射化学的収率は40%(減衰補正値)で放射化学的純度は97.4%、比放射能は7.8Ci/μmol(減衰補正値)であった。腫瘍モデル動物は、エールリッヒ腹水がん細胞またはラット腹水肝がん細胞をそれぞれddYマウスまたはドンリュウラットに皮下移植して作製した。それぞれのモデル動物に2.2MBqまたは7.0MBqの[^<11>C]ITPD溶解生食液を尾静脈内投与し、クレビボPETで体内の放射能分布を測定した。その結果、放射能は投与後速やかに肝臓や腎臓に、そしてその後は小腸や膀胱に高い集積性を示した。一方、腫瘍組織に対しては、いずれも筋肉や胸部の臓器と同等の放射能集積しか示さず、特異的集積性は確認されなかった。この結果から、[^<11>C]ITPDとVEGFR3発現の相関性を検証する必要があるものの、腫瘍画像化プローブとしての有用性は低いと考えられる。
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