前年度に集積したデータを解析し、肝細胞癌に対する治療効果・有害事象について解析しました。解析の結果、肝細胞癌に対して陽子線治療を施行する際は、腫瘍周辺の消化管・肝門部などとの位置関係から治療スケジュールを選択することが陽子線治療を安全に施行するために必要であると判断されました。特に消化管に腫瘍が近接する際は、消化管出血や消化管潰瘍などのリスクがあるため慎重な治療が必要と判断されます。この解析によって、これまで不明確であった肝細胞癌に対する陽子線治療の必要線量・線量分割が明確化され、今後の陽子線治療の普及に大きな意義があると考えられます。また、今回の解析では巨大腫瘍や血管内腫瘍塞栓など従来の治療法では根治困難な症例であっても、安全かつ良好な治療効果が得られる事が明確化しました。従来の内科的治療法が困難なこれらの病態が治療可能となることによって、これまで無治療で経過観察を余儀なくされていた多くの患者さんに根治的な治療が可能となることが予想され、臨床的意義は極めて大きいと判断されます。 陽子線治療が安全に照射可能な対象を明確化するための解析を施行しました。その結果、陽子線治療後の肝機能悪化を防ぐには、正常肝臓に対する陽子線照射体積を最小限にすることが重要であると判断されます。陽子線治療はその優れた線量集中性から正常肝臓に対する照射体積を最小限にすることが可能であり、肝細胞癌に対する治療手段として非常に有用であると考えられます。今回の解析では、安全に照射可能な範囲を明確に数値する事は出来なかったが、特に肝機能不良な患者では正常肝臓に対する照射体積を少なくすることが非常に重要であると判断されます。肝機能保持するための因子が明確化したことは、今後の肝細胞癌に対する陽子線治療において大きな意義があると考えられます。
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