64-Cuポジトロン核種をPTSM薬剤を用いてiPS細胞内に取り込ませて細胞の標識を行い、標識されたiPS細胞の細胞懸濁液をマウスに投与して、micro PET装置で画像化する実験を実施した。 iPS細胞は通常フィーダー細胞と呼ばれる線維芽細胞の上でコロニーを形成して発育する。この状態であると、iPS細胞単独の画像化ができないため、iPS細胞のみで発育する細胞株を作成した。標識については64-Cuだけでなく、同じポジトロン核種である18-Fを用いた18-F-FDGでもiPS細胞の標識を行っている。最終的な標識細胞は100-300-MBql/ml程度の細胞混濁液が作成された。標識されたiPS細胞の投与経路は2つの別の経路で行っている。ひとつはマウスの尾静脈からの細胞懸濁液の注入で、もう一方はマウスの左室(心臓)腔内への直接投与である。 結果としては早期から24時間後までの比較的良好な画像を得ることができた。第一に、尾静脈からの投与では肺にほとんどのiPS細胞が集積しており、肺の微小血管にトラップされたものと考えた。(FACSでの解析では線維芽細胞よりも細胞経の大きな細胞として認められている)第二に、左室腔内への直接の細胞混濁液注入では脳や肝臓に強い集積が認められており、早期の段階ではiPS細胞がこれらの組織に存在していることが考えられた。ただし、細胞懸濁液投与後3時間後以降はその他の組織へのポジトロン核種の集積が認められており、心筋への集積があることから、iPS細胞が破壊されている可能性を考えた。 以上のことより、ポジトロン核種で標識することにより、iPS細胞の24時間以内の早期分布が画像ができることがわかった。長期の経過を追うためには、iPS細胞がマウスの体内で破壊されないような工夫が必要であると考えられた。(次年度実験予定)
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