研究概要 |
64列CT装置を用いたECG同期冠動脈CTA施行時における胸部臓器の吸収線量を,撮影法や被ばく線量低減機能の設定値・心拍数を変化させた場合について,人体等価ファントムと素子線量計を用いた詳細な評価を行った,併て,線量指標値(CTDIvol)から各臓器の吸収線量換算係数を導出した. その結果,被ばく低減機能を適用しない場合や,適用する場合でもその設定値や心拍数によって,胸部臓器の吸収線量が200mGyを超える可能性があることを確認した.この結果は,ECG同期冠動脈CTAを施行することにより,がん誘発のリスクが上昇する可能性を否定できないことを示している.一方で,ECG同期非螺旋スキャン法を適用することによって,従来法の30%程度の吸収線量に抑えられることも明らかにした.また,導出された換算係数を用いることによって,本研究のような手間のかかる測定を行わずに,撮影開始前に胸部臓器の吸収線量を推定することが可能となった. 引き続き,128列2管球型CT装置について,可能な撮影法ごとに胸部臓器の吸収線量を詳細に評価した.その結果,撮影法によって胸部臓器の吸収線量は大きく異なり,従来法では,64列CT装置を用いた従来法と同様に200mGyを超える可能性があるが,ECG同期高速二重螺旋スキャン法では,10mGy以下に抑えられることが確認できた. 以上より,どのCT装置を用いてECG同期冠動脈CTAを施行する場合であっても,撮影法や被ばく低減機能の設定値・心拍数によって胸部臓器の吸収線量は大きく異なり,場合によってはがん誘発のリスクが上昇する可能性を否定できない線量となることが確認された.本研究によって,ECG同期冠動脈CTA検査が,被ばく低減を十分に意識した撮影法や撮影条件の選択を行い,場合によってはβ遮断薬による心拍コントロールも行った上で施行すべき検査であることが明らかとなった.
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