研究概要 |
ECG同期冠動脈CTA施行時に最も威力を発揮するとされている2管球型CT装置を用いて,複数の撮影方式で撮影された被検者」の画像を対象とした画質評価,換算式を用いた各被検者の臓器吸収線量推定(肺および女性乳房),および発がんリスクの評価を行った.対象とした撮影方式は,ECG同期高速二重螺旋スキャン法,ECG同期非螺旋スキャン法,ECG同期螺旋スキャン法の3種類である. その結果,得られた画像のノイズ特性には大きな差は認められなかった.一方,放射線科医2名による診断許容性の判定では,ECG同期高速二重螺旋スキャン法が他より有意に劣ったものの,診断に際しては許容できるレベルであることが示された. また,臓器吸収線量の推定を行ったところ,撮影方式により有意な差を認め,特にECG同期螺旋スキャン法を適用した場合,大半の症例で肺の吸収線量が100mGyを超えることが確認されたが,ECG同期高速二重螺旋スキャン法では,全ての症例で肺の吸収線量が9mGy未満であることが確認された.BEIR VII Phase 2 reportより推定した肺がんの発生リスクは,年齢と強い相関を認め,特に女性や若年者で高くなる傾向にあり,ECG同期高速二重螺旋スキャン法では平均で100000人あたり6人(0.006%),ECG同期非螺旋スキャン法では平均で100000人あたり34人(0.034%),ECG同期螺旋スキャン法では平均で100000人あたり73人(0.073%)であった, 本研究で得られた成果は,ECG同期冠動脈CTAを施行する際に,心拍数や心拍の安定性などを考慮した上で,可能な限り被ばく低減を十分に意識した撮影方式を選択すべきであり,特に肺がんの発生リスクの観点から考えると,女性や若年者を対象とする場合には注意すべきであることを明確に示すものである.
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