研究概要 |
本研究は乳癌の診断を支援するため,過去に診断された症例より,新しい症例に類似する画像を検索し参考として提示する,画像診断支援システムの開発を目的とする.本年度は昨年度取得した画像に加え,課題であった良性症例の補充を行うため,あらたに200症例程度取得しデータベースを充実させた.本研究では,診断する医師にとって役立つように,医師が類似すると考える画像を選択することを目指している.そこでサンプルとしてデータベースから5症例以上存在する9病理分類より3画像ずつ選択し,2画像ずつ全ての組み合わせ351ペアに対して,8名のマンモグラフィ読影認定医から主観的類似度を取得した.取得した類似度をゴールドスタンダードとして,これに相関の高い客観的類似度の決定法を検討した.実験では人ロニューラルネットワークを用いて,主観的類似度の平均を教師信号とし,画像の特徴量を入力信号としてこれらの関係を学習させた.これにより,テスト画像に対して,学習済みニューラルネットワークから客観的類似度を決定した.Leave-one-out法により評価を行ったところ,主観的類似度に対して,客観的類似度は0.87という高い相関が得られた.これは従来の特徴量空間での距離をもとにした手法の相関値0.65と比較し,大きな改善であった.本手法を用いれば,より類似性の高い参照画像が選択でき,診断に役に立つ可能性がある.この結果は11月の北米放射線学会(RSNA)で発表した.来年度は,新たな手法も含め,より診断に役に立つ類似画像選択法・表示法の検討を行う予定である.また,類似画像の提示が診断の役に立つかの評価を行いたい.
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今後の研究の推進方策 |
上記のように,現時点で微小石灰化陰影を含む症例の増加は困難が予想されるため,今後は腫瘤陰影のみを対象として,手法の改善や有用性の評価を行う予定である.本研究の問題点としては,症例の偏りであるが,これはもともとの病気の頻度に関係するため簡単には解決できない.今後も定期的に症例を増やしていくことで対応したい.
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