メタボリックシンドロームは動脈硬化の原因となり、さらに動脈硬化病変に生じる不安定プラークは、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす。一方、動脈硬化病変が進行しても安定プラークであればこのような病態を生じない。したがって、動脈硬化性疾患の予防のためには、不安定プラークを早期に検出し治療を行うことが重要である。本研究では、分子標的化機能性リポソームを基盤とした、不安定プラークの分子イメージング剤を開発する。平成21年度までに、蛍光標識リポソームを作成し培養マクロファージにて蛍光顕微鏡にて観察を行い、100-200nmのリポソームはマクロファージに取り込まれることを見いだした。この結果を基に平成22年度は、リポソームに表面修飾を施しマクロファージへの標的性を高める検討を行った。すなわち、不安定プラークに存在するマクロファージは、フォスファチジルセリン(PS)を認識しPSを発現した細胞を取り込むことが知られていることから、構成脂質としてPSを組み込んだリポソームを作成した。作成したリポソームは、^<111>Inを内包することにより放射性標識をした。放射化学的収率は98%であり、極めて効率よく標識することに成功した。次に、作成したリポソームを用い、培養マクロファージへの取り込みについて、定量的に検討を行った。この結果、100nmのPS修飾リポソームでは、100nmの非修飾リポソームおよび200nmのPS修飾リポソームに比較し、有意に高く取り込まれることがわかった。そこで、作成したリポソームをマウスに投与し体内動態を検討したところ、PS標識リポソームは非標識リポソームに比較し脾臓への蓄積が少なく、細網内皮系への取り込みが少ないと考えられた。これらの体内挙動が、in vivoでの不安定プラークへの集積に及ぼす影響を調べるため、来年度は動脈硬化モデル動物であるapoEノックアウトマウスやWHHLウサギを用い、解剖法さらにSPECTにて検討を行っていく予定である。
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