本研究は、医用画像の診断に用いる液晶モニタの性能評価に認知心理学的な手法を導入して、カラー液晶モニタによる画像診断の臨床的な安全性を検証した。実験は、実験(1)モニタ特性の物理的測定及び実験(2)ファントム画像(模擬画像)による認知心理学的な読影実験を行った。モニタは名古屋大学医学部附属病院で使用している液晶モニタを対象とし、医用画像表示用高精細液晶モニタ(高精細モニタ)と文字情報表示が中心の電子カルテ用液晶モニタ(汎用モニタ)を比較した。 ・ 実験(1)モニタの特性の物理的測定 汎用モニタは高精細モニタと比較してグレースケール表示が異なり、頭部CT画像の脳実質のコントラスト分解能は良いことがわかった。これは、汎用モニタで表示されるグレースケールが、頭部CT画像脳実質の表示色のコントラスト分解能が良いことが理由で、コントラスト分解能が不良となる表示色もあった。他の部位、他の画像のモニタ表示についてはさらに評価が必要である。 ・ 実験(2)模擬画像による認知心理学的な読影実験 コントラスト差の認知について汎用モニタと高精細モニタを比較するため、頭部CT画像の模擬画像を作成しモニタに表示させ、画像診断は医師である人が病巣を探す行動であることから、視覚探索の読影実験を行った。模擬画像は小さいコントラスト差の目標となるターゲットを探す画像を作成した。汎用モニタは実験(1)と同様に、高精細モニタよりも頭部CT画像脳実質のコントラスト差の認知が高かった。このような認知心理学的な視覚探索実験で画像評価を行ったが、画像診断に用いるモニタの評価を行えた。頭部CT画像の脳実質内において、正常組織と病巣など小さなコントラスト差の区別は、高精細モニタより汎用モニタの方が良好であると予測できた。
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