研究概要 |
近年の医用画像は,フィルム読影からモニタによる画像診断(以下,モニタ診断)に変わっている。モニタ診断には,医用高精細モニタ(以下,医用モニタ)が使用されるが,電子カルテなどでは文字閲覧を主目的としたパソコン用などの汎用モニタ(以下,汎用モニタ)で画像を表示することもある。このため,汎用モニタで表示することの臨床的安全性を検討することは,誤診などを招かない環境作りとして重要である。そこで,液晶モニタによる画像診断の臨床的安全性を検討するため,昨年度までに,モニタ特性の物理的測定と模擬画像による読影実験にて,医用モニタと汎用モニタを比較し頭部CT画像の診断について検討を行った。今年度は,実際の頭部CT画像を用いて,同様の検討を目的として読影実験を行った。医用モニタとiPadによる頭部CT画像の脳梗塞検出能を比較するため,100症例の頭部CT画像(健常50例,脳梗塞を含む50例)を,9人の放射線科医師で読影実験を行った。医用モニタは,DICOM用のグレースケールGSDF(以下,GSDFモニタ)と汎用モニタで使用されるグレースケールのガンマ2.2(以下,ガンマモニタ)に調整し,iPadの3種の液晶モニタを比較した。データ解析には,ROC解析を用いた。ROC曲線下面積は,GSDFモニタ0.862,ガンマモニタ0.872,iPad 0.824であった。GSDFモニタおよびガンマモニタのROC曲線下面積は,統計的有意差は認められなかったが,iPadとGSDFモニタおよびガンマモニタのROC曲線下面積は,それぞれ統計的有意差が認められた(p<0.05)。頭部CT画像の読影は,GSDFとガンマ2.2のグレースケールによる差はなく,どちらのグレースケールでも読影に問題はないと考えられる。また,iPadによる読影は,臨床的な安全性が低いことが示唆された。
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