平成21年度は、3Tの臨床研究用MRI装置(Siemens社製Magnetom Trio)を使用して正常ボランティアを対象に心電図同期脳脊髄腔MR画像撮影を試みた。画質向上のため、parallel imaging法と頭部専用高感度受信コイル(32chコイル)を用いて撮影を行った。生体における最適な撮影シーケンスおよび、収縮期・拡張期における最適な心位相での撮影タイミングの決定を試みた。3T MRIの優れた高磁場特性および多チャンネルコイルの併用により、高コントラストおよび高解像度の脳脊髄腔MR画像を得ることが可能となった。しかし、心拍動による脳実質の移動は相対的に小さく、脳拍動による脳体積の変化、脳変形の解析は困難であった。収縮期・拡張期における脳実質の変化量は、多くの領域で現時点でのボクセルサイズ以下である可能性が示唆された。終板は心拍動により可視可能な変化がみられ、これは過去の報告と一致していた。目的とする定量解析のためには心拍動による脳実質の移動量をボクセルサイズ以上にする必要があり、シーケンスの変更を行うとともに、撮像範囲を絞るなどして、より微細な変化を解析可能とするようさらに検討を進めている。また、今回の検討は比較的若年ボランティアを用いた撮影であり、年齢が結果に影響を与えた可能性がある。収縮期・拡張期における最適な撮像タイミングも年齢や病態により異なる可能性があり、高齢者や患者群での検討も進めていく予定である。
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