3Tの臨床研究用MRI装置(Siemens社製Magnetom Trio)を使用して主に正常ボランティアを対象に心電図同期脳脊髄腔MR画像撮影を試みた。画質向上のため、parallel imaging法と頭部専用高感度受信コイル(32chコイル)を用いて撮影を行った。生体における最適な撮影シーケンスおよび、収縮期・拡張期における最適な心位相での撮影タイミングの決定を試みた。3T MRIの優れた高磁場特性および多チャンネルコイルの併用により、高コントラストおよび高解像度の脳脊髄腔MR画像を得ることが可能であったが、心拍動による脳実質の移動は相対的に小さく、脳拍動による脳体積の変化、脳変形の解析は困難であった。収縮期・拡張期における脳実質の変化量は、多くの領域で現時点でのボクセルサイズ以下である可能性が示唆された。目的とする定量解析のためには心拍動による脳実質の移動量をボクセルサイズ以上にする必要があり、前年度の結果を受けて、さらなるシーケンスの改良を試みたが、サブボクセル以下の変化量を測定することは本年度内には困難であった。このような微小な変化を測定するために引き続きシーケンスの改良を進めるが、より強力なグラディエントコイルの開発などハード面での改良も必要と考えられた。脳実質全体の測定は困難であったが、終板は心拍動により可視可能な変化がみられ、過去の報告と一致していた。このような限局的な変化も正常圧水頭症などの脳脊髄液に変化を来しうる疾患では影響を受けている可能性があり、今後その有用性が期待される。
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