研究課題
まず、アフリカツメガエルの卵母細胞という小さな対象を撮影するにあたり、核磁気共鳴画像における適切な撮影条件に関する検討を行った。ファントムを用いた実験で信号ノイズ比、造影コントラスト、画像のひずみなどの評価を行い、最適なシーケンス、繰り返し時間、エコー時間などを決定した。適切な条件を用いることで直径1mmの卵母細胞でも十分な画質の核磁気共鳴画像が得られることが確認された。次いで、ヒトの肝細胞に発現している膜タンパク質の遺伝子をマイクロインジェクション法で導入したアフリカツメガエルの卵母細胞を用意し、肝細胞特異性造影剤であるGd-EOB-DTPAの取り込みについて核磁気共鳴画像により評価を行った。コントロールとしては、遺伝子のかわりに水を注入した卵母細胞を用いた。膜タンパク質であるOATP2あるいはOATP8が膜表面に発現した卵母細胞においては、Gd-EOB-DTPAの細胞内への取り込みが確認されたのに対し、コントロールの卵母細胞では、明らかな取り込みは認められなかった。この結果より、Gd-EOB-DTPAがヒトの肝臓においては、OATP2およびOATP8を介して肝細胞内に取り込まれることが強く示唆された。今後は、他の肝細胞のトランスポーターの関与についても検討していく必要がある。Gd-EOB-DTPAの動態に関与する膜タンパク質を同定することは、Gd-EOB-DTPA造影核磁気共鳴画像が肝機能や肝疾患の病態の評価などにおいて臨床応用可能かどうかを検討する上で必要不可欠な基礎的知見である。
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