EGFRは上皮成長因子(EGF)のチロシンキナーゼ型受容体で、細胞膜を貫通して存在する膜タンパクである。細胞膜上にあるこの受容体にEGFが結合すると受容体は活性化し、各経路のシグナル伝達を介して細胞を分化、増殖させる。本研究の目的はEGFRおよびその下流に存在するシグナル伝達と、放射線照射によるDNA二重鎖切断修復との関係を解明し、抗EGFR抗体やEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)と放射線照射における併用効果の機序解明と新たな適応の拡大や薬剤の組み合わせの開発の基礎となる研究を行うことにある。H21年度はEGFR-TKIとしてGefitinibを使用し、Gefitinib反応下によるMTTアッセイでは、Gefitinibの濃度依存性に細胞生存曲線が低下することが確認された。 H22年度はMTTアッセイの結果を基に、放射線照射とGefitinibの併用によるColony formingアッセイを行い照射とGefitinibの併用効果による細胞障害性の確認を行なった。この結果からはGefitinibによる放射線照射との併用効果が明らかでなかった。この原因は現時点で明らかでないが、細胞腫によって放射線との併用効果に差が出ることが示された。また、癌種によるEGFRの発現に変化が大きいため細胞種ごとの発現ライブラリーの作成を行った。使用した細胞種はA431、BxPC3、MIApaca2、Panc1、Hela、MCF7であり、細胞ごとのEGFRの発現量の比較を行った。EGFRの発現量と抗EGFR抗体・EGFR-TKIとの感受性との相関があることが予想された。また放射線治療との併用における抗腫瘍効果の増強に関しても、細胞種ごとのEGFRの発現量との相関が予想された。
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