研究概要 |
本研究の目的は,腫瘍移植鶏卵モデルによるin vivo活性を指標とした多機能性放射線増感剤の創製である.具体的には,安価でジェネティック制御下にあるため個体差が小さく,実験誤差が小さく,倫理的問題の少なくて済み,動物舎等の特別な施設を必要としない発育鶏卵(発生中の受精鶏卵のこと)を用いて漿尿膜血管上に固形腫瘍を形成させた腫瘍移植鶏卵モデルを作成し,in vivo放射線増感活性を指標として臨床応用を目指した低酸素細胞放射線増感剤の開発を試みるものである.平成21年度に実施して得られた成果は,発育鶏卵に対する最適な腫瘍移植条件として,自動転卵した11日目の発育鶏卵にマウス乳腺癌由来細胞EMT6を5×10^5個/鶏卵で移植することにより安定した固形腫瘍の成長と高い鶏胎児の生存率を得ることが可能であることを見出した.また,低酸素細胞放射線増感剤として臨床試験が実施されたエタニダゾールを用いて15日目の発育鶏卵に静脈注射することで,鶏胎児毒性を示すことなく高い腫瘍集積性・滞留性を示すことが分かった.放射線の照射方法については,150kVの実験用X線照射装置と6MeVの治療用照射装置を用いて鶏胎児に対する耐線量を調べたところ,両者とも12Gy付近でLD_<50>を示し,8Gy以下では目立った毒性を示さないことが分かった.低酸素細胞放射線増感剤の増感効果を評価する方法として,自動転卵した15日目の発育鶏卵1~3mgのエタニダゾールを静脈投与し,その10分後に2~8GyのX線を照射後72時間後の腫瘍を単離して重量を測定し,コントロール群と比較して得られる固形腫瘍の成長阻害率からin vivo放射線増感効果を求める方法が確立できた.以上の結果より,腫瘍移植鶏卵モデルによるin vivo活性を指標とした多機能性放射線増感剤の創製についての第一段階の構築が完了した.
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