撮影実験を行なうためのビームタイムが確保できている高エネルギー加速器研究機構のPhoton Factory-BLl4では、20.0keVまでの平行・単色X線を安定な状態で利用できる。そこで、今年度は17.5keVと20.0keVにおいてそれぞれ380μm厚と570μm厚のラウエ型アナライザを導入した2種類のX線暗視野法用光学系を立ち上げた。このビームラインには、画素サイズ9.0μmと7.4μmのX線CCDカメラが配備され、これらを画像検出器として利用することができた。10月のマシンタイム時までに、これらのX線光学系とX線CCDカメラを組み合わせて、デジタルトモシンセシスが可能なシステムを完成させた。 当研究課題では放射光X線を利用するため、X線源が固定されている。そこで、撮影試料を回転させることでX線の入射方向を変更させることになる。このとき厳密な画像再構成を行なうためには撮影試料の回転軸の割り出しが重要となる。依然として改善の余地は残るが、今年度は円柱の被写体を利用して回転ステージの回転軸を微調整し、その円柱の中心軸が画像中心となるように補正することで撮影試料の回転軸を割り出した。 今年度最後の1月のマシンタイムでは、乳がんの病理切片を撮影試料として、X線エネルギー20keV、アナライザ厚570μm、画素サイズ7.4μmのX線CCDカメラによる屈折型デジタルトモシンセシス用の生データ取得と画像再構成を試みた。その結果、従来の吸収コントラストでは描出されない構造が断層像として精密に描出されることが確認できた。
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