研究概要 |
急性期脳梗塞の画像診断において,MRI拡散強調画像(MRI-DWI)は中心的な役割を占めるが,画像のウインドウ調節により表示階調が大きく変化する.前年度の研究において,既に考案されている,視床の信号強度を用いるMRI-DWIの表示条件の標準化法に対する自動化を試みた.しかし,視床が,脳血管障害の好発部位であること,視床の信号強度を計測する画像(b0画像)の信号対雑音比が不良であることから,症例間におけるMRI-DWIの信号強度や画像コントラストが変動するものと推測した. そこで,前年度に構築した画像データベースを用いて,視床の信号強度を計測することなく,MRI-DWIの表示階調を自動に正規化できる,新たな方法を考案した.具体的には,プログラミング技術により,b0画像の脳実質部の濃度ヒストグラムから最頻値となる信号強度を求め,その信号強度を用いて,MRI-DWIのWWおよびWLを自動設定するシステムを開発した. 既存の考案方法と本自動化システムによって調節された,それぞれの各症例間のMRI-DWIに対し,濃度ヒストグラムから求めた画像評価値を用いて症例間の変動係数を求め,システムの性能を評価した結果,既存方法では±13.0%となったのに対し,本システムでは±7.0%となった.また,本システムを用いて表示階調を正規化させたDWIは,既存の考案方法に比べ,症例間において信号強度や画像コントラストが視覚的に極めて類似した. したがって,視床の信号強度を利用することなく,安定した画像表示を非常に短時間で行える本システムは,装置間,施設問,及び被検者間におけるDWIの表示階調の標準化において,非常に有効であり,画像診断と血栓溶解療法の迅速且つ正確な判断につながるものと考える. 以上の内容をまとめて映像情報メディア学会誌に投稿し,"原著論文"として受理された.
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